廃水ピットのサイズ決定
廃水ピットのサイズを決定する方法を、実践的な計算例を用いて解説します。
廃水ピットは、需要を確実に満たせるように実際の要件よりも大きく作られていることが多くあります。しかし、この安全策は逆効果になってしまうことがほとんどです。
このタスクでは、商業ビル内の各種サービスや小規模な自治体の排水システムで最適な運転条件を確保するために廃水ピットの適切なサイズを決定する方法を学びます。また、このプロセスに役立つ実践的な計算例もご紹介します。例はすべて最大30 kwの電動機を搭載したポンプに適用されます。
要件を超えるサイズのピットを設けることのデメリットは、廃水がピットに留まる時間が長くなりすぎてしまい、沈殿や、最終的には詰まりの原因となってしまうことです。なぜでしょうか?
例えば、最適なピットサイズが1.5mであるケースで、万が一に備えてやや容量の大きい2mのピットを設けたとします。ピットの直径が変わってもポンプが始動、停止する水位は変わらないため、廃水の水位がポンプを始動させる値に達するまでにより長い時間がかかることになります。始動の頻度が減ることで廃水がピット内に留まる時間は長くなります。
ピットのサイズを決定する際、考慮するべき要素は主に4つあります:
- 流入量
- 有効容積
- ピットの直径
- 始動レベルと停止レベル間の距離です
この4つの項目を1つずつ取り上げて、考慮すべき要素と各ステップの計算方法を解説していきます。
ピットのサイズを決定するうえでまず特定しなければならないのは流入量です。この値を求める計算は非常に複雑なため、通常は外部の専門家に提供してもらうことができます。流入量は時間帯や日によって変動があり、廃水の性質によっても異なります。雨水の場合は変動が大きくなりますが、下水の場合はより規則的な流量変化が見られます。
流入量がわかったら、求められるポンプの容量を計算することができます。
流入量が1秒あたり32リットルのケースを例にとってみましょう。必要なポンプの容量を求めるには、流入量を1.05倍します。つまり、この場合はピットから廃水があふれ出ないようにするにはピーク負荷時に1秒あたり34ℓを移送することができるポンプが必要です。
ポンプを選択する際には、需要がピークに達する時間帯にも対応できるよう、1時間当たりに実行できる始動の回数も確認しておくことが重要です。1時間当たりに実行可能な始動回数が多いほど理想的です。
では次に有効容積を計算しましょう。ですがその前に、設置するポンプの台数と、複数のポンプを並列運転するのか、それとも交互運転するのかを明確にする必要があります。
2台以上のポンプを同時に運転する並列運転は、一般的に下水と雨水の両方を処理する混合システムに用いられています。それぞれのポンプがサイクルごとに運転とスタンバイを切り替える交互運転は、下水と雨水が別々のシステムを通過するケースに適しています。
それでは、この2つのケースにおける有効容積の計算方法を見てみましょう。
2台のポンプを並列運転している排水システムでは、必要な容量を2台で提供しています。言い換えれば、ピーク負荷時には2台合わせて1秒当たり34ℓの流量を達成しています。
この例のポンプは、1時間当たり20回始動を実行することができます。
こちらは、始動から停止までの有効容積を求める計算式です。有効容積が1.53m3であることがわかりました。
交互運転を用いたシステムにおける有効容積も全く同じ計算式で求めることができますが、並列運転ではポンプ2台分の容量を用いたのに対し、今度はポンプ1台のみの容量を用います。
よって、ポンプのサイズを選択する際には、どのポンプも1台だけで必要容量を100%達成しなければならないことを忘れないようにしましょう。つまり、このケースで使用されるポンプは並列運転のポンプよりも大きくなります。
次に、ピットのサイズを決定します。このタスクのはじめにご説明したように、ピットの直径を正しく決定することは最適な運転条件を確保するうえで必要不可欠です。ピットが大きすぎるとポンプの始動や停止の回数が十分でなくなり、沈殿につながる恐れがあります。
必要な直径は、ポンプの台数と配管などのために必要な空間によって決まります。
2台のポンプを並列運転する先ほどの例を用いると、このシステムでは直径1.8 m、または半径0.9 mのピットが必要です。
ここまでの数値がそろうと、始動レベルと停止レベルとの間の距離、つまりは有効高さを計算することができます。
有効容積は1.53m3、ピットの半径は0.9 mであることがわかりました。
有効高さを求めるには以下の計算式を使います。すると、有効高さは0.6 mとなります。
なぜ、始動レベルと停止レベルとの間の距離を正しく決定することが重要なのでしょうか?距離が長すぎるとサイクルの数が減り、廃水がピット内に留まる時間が長くなりすぎてしまうため、ポンプ内に沈殿が生じる恐れがあります。これは最終的に詰まりを起こし、予定外のシステムの休止につながります。
一方、始動レベルと停止レベルとの間の距離が短すぎると、始動や停止の回数が増え、ピーク負荷時に電動機が過負荷状態になり、距離が長すぎる場合と同じようにシステムを休止せざるをえなくなります。よって、ポンプと電動機が1時間に実行できる始動や停止の回数の上限を考慮することが重要です。
最後に、ポンプを2台使ったほかのシステム構成について簡単に触れておきたいと思います。
ポンプステーションがカバーしている住宅が数件しかない場合は流入量が限られるため、1台のポンプのみで必要な容量を十分にまかなうことができます。ですが、廃水が流れる速度を高く保つことで加圧配管内の沈殿を効果的に防止できるよう、流入量よりも大幅に容量が大きいポンプを選ぶ必要があります。
2台以上のポンプを使ったピットは、混合システムで容量を拡大したり、豪雨などの突発的な需要増加に対応できるように予備のバックアップポンプを確保したりするために使用されるのが一般的です。