水マトリクスとさまざまなタイプの工業プロセスに対する理解を基に水の再利用に関する要件を特定する方法
さまざまなタイプの工業プロセスと水、および水の再利用システムの水質要件の意義について説明します。
このモジュールでは水のマトリックス、工業プロセスの種類および水の種類を理解することの重要性を説明し、水の再利用システムに必要な水処理の種類と水質の要件を特定できるようにします。
工業用水の再利用プロセスについて説明する前に,水処理について簡単に説明します。水処理は、最終目的の用途に適した水をつくるためのプロセスを意味します。
すなわち、飲料水、工業プロセス、医療目的、その他多くの目的のために水を処理します。水処理では、要求される水質に応じて含有物を除去したり、加えたりします。それ以外のプロセスとして挙げられるのは、水の移送、すなわち 処理前の取水、処理後の供給となります。
詳しくは、ECADEMYコース「工業用水処理」に進み、工業プロセスにおける水処理、各種処理手順の詳細な調査の概略をご覧ください。いずれの工場においても水の再利用プロセスを設計するには、考慮しなければならない多くの要件があります。この要件として挙げられるのは、利用可能な技術:
適用された処理プロセスによって目的に合った品質の水の再利用ができますか?
安全性と信頼性:システムは確実に稼働して求められる品質を維持できるでしょうか?
法および規制:関連する法律や規制に準拠し、承認を得ているでしょうか?
経済面:優れたビジネスモデルとなり得るでしょうか?
工場で水の再利用プロセスを確立する際には、水をどこでどのように再利用するかによって、様々な方法があります。
一部の工場におけるプロセスでは分散型の水の再利用が行われていますこの分散型の方法が採用されるのはより優れたプロセス制御や低い投資コストが可能になるからですもしくは工場内で処理を完結するエンド・オブ・パイプの廃水処理と再利用によりより大量の水が再利用できますこの方法は、水の使用量の削減に非常に大きな効果があります。
しかしこの方法には多額の投資と複雑なプロセスが必要です。どこで再生水を使用するかについて考慮することも重要ですこれは技術面や経済面における選択と同様に、法的側面に対しても影響を及ぼします。
多くの場合、水は工場のユーティリティにおいて再利用されます。例えば、ボイラー、冷却塔およびCIPなどです。製品との接触がないか最小限であるためリスクの少ないアプリケーションや再利用への抵抗がある場合に対しても有効です。
産業コアプロセスにおける水の再利用は実際に製品との接触があり多くの品質管理や信頼性の確認を行わなければならないため、各種規制に対する懸念の対象となります。
工場で水を再利用できない場合には、近郊の他の産業施設や工業用途で使用するために、再生水を提供することも可能です。
最適な水再利用プロセスを設計する際には、水源、所定の水質、水中に存在する含有物、そしてそれが有機物、無機物、混合物のいずれであるかを理解することが不可欠です。
これによって、水マトリックスが複雑か単純かを特定することができます。さらには、再利用プロセス後、水をどのように使うのかという目的に沿って、処理プロセスの程度、適切な処理方法を定めていきます。
この時点で、どの処理方法が必要かを示すため、各産業分野を水マトリックスに適合させることができます。主に有機含有物を取り扱う分野はいくつか存在します:
一般的に食品・飲料業界は、比較的扱いやすい有機物を多く取り扱っています。
取り扱いが難しいが量は多くない業界が医薬品業界で、特殊な物質を除去するには特殊な処理が要求されています。
一方、パルプおよび紙の工業プロセスでは固体の含有量が多いため、濾過が必要となる可能性が高いです。無機廃水を扱う産業分野においては、一般的な含有物として挙げられるのは塩分です。
このことは、鉄鋼、鉱業、海洋、半導体産業、発電所に当てはまります。塩化物、硫酸塩などは塩分濃度を高めるため、逆浸透やナノろ過などの処理において、高い圧力が求められます。
重金属、有毒物質、掘削から発生する放射能は、水処理だけでなく、その後の固形物の取り扱いにも特別で困難な作業が要求されます。有機物と無機物の両方を取り扱う分野には、化学、プラスチック、印刷産業、
リサイクル、石油産業、工業団地などが挙げられます。繊維産業は混合物質を扱う分野の例の1つですが、これは生産工程において水に有機物と無機物の両方が含まれるためです。
ここで説明した内容をまとめてみましょう。
水源、所定の水質、水中に存在する含有物、そしてそれが有機物、無機物、混合物のいずれであるかを理解することが不可欠です。
水の再利用プロセスを設計する際には、考慮すべき様々な側面があります。
工業用水処理は、常に求められる最終用途に適合させる必要があります。
産業分野と水マトリックスを適合させることで、どの処理方法が必要か検討します。