産業用水供給システム入門
産業用水供給システムの全貌と、課題や改善方法について学びましょう
一般的な工場施設はポンプを含めた様々なアプリケーションで構成されており、そのすべてが産業用水供給システムにつながっています。よって、それぞれのアプリケーションを切り離して考えるのではなく、インフラシステムを構成する1つのパーツとしてとらえることが重要です。
こうすることで、システム全体の効率を最適化し、場合によっては消費電力を大幅に削減することが可能になります。Europumpが行った調査では、エネルギー効率の最適化のうち20%がシステム制御の改善によって実現できることが示されています。
このタスクでは産業用水供給システムの仕組みを解説すると同時に、最もよく見られる課題をいくつかご紹介します。
通常、産業用水供給システムに関連する主なタスクは、増圧、液面制御、液体移送、ろ過の4つあります。それぞれのタスクを詳しく見てみましょう。
増圧は、システム全体の圧力を最適なレベルに維持するための仕組みです。水を利用する地点がポンプの近くでも、生産施設の端にあっても、圧力が同じレベルであることが重要です。エネルギー効率を最大限に引き上げるためには、需要に合わせて出力を調整できるインテリジェントポンプがおすすめです。
増圧は洗浄 & クリーニング施設など様々な生産ラインの鍵を握る工程です。ここでは、使われる蛇口の数が1カ所でも10カ所でも、施設内のあらゆるポイントで同レベルの圧力を利用できるようにすることが求められます。
液面制御とは、貯蔵タンクから水を出し入れすることによってタンク内の水位を一定に保つプロセスのことを指します。この機能は、貯蔵タンク内の液体の水位を一定に保つ必要がある、食品や医薬品を取り扱う施設などで応用されています。
タンクを満たすのは比較的簡単ですが、ポンプを使ってタンクを空にする必要が生じた場合は難易度が高くなります。渦や乱流が起きるとポンプがタンクから十分な量の水を吸い出すことが難しくなるからです。また、渦によって起こるキャビテーションや振動も、最悪の場合はポンプの故障につながります。このような状況を防止するには、貯蔵タンクのサイズと水を抜く速さの適切なバランスを取ることが重要です。例えば、小さなタンクから1時間あたり100m3 の速度で水を抜くと、ポンプが損傷を受けるリスクが非常に高くなります。
液体の移送は産業用水供給システムのあらゆる部分で起こる重要な工程です。移送速度が低いほど費用は安くなりますが、沈殿のリスクが高くなります。よって、適切なバランスを見つけることが重要です。
理想的なバランスは移送する液体の状態によって異なるため確立された基準は存在しませんが、一般的に液体に含まれる粒子が大きく重いほど速度を上げる必要があります。
最後のタスクであるろ過は液体から固体を分離させるプロセスを指します。ポンプを通して水に圧力を加え、フィルターを通過させて固体を取り除きます。しかしフィルターが詰まると洗浄が必要になります。しかし、フィルターを取り外して洗浄しても、逆洗洗浄プロセスや圧縮空気による洗浄のどれを選んでも、その間生産を停止しなければならないため、コストの高い作業となります。洗浄はフィルターの種類によって決まります。
インバータが内蔵されたポンプとセンサを使うと、この問題を克服することができます。センサがフィルターの詰まりを測定します。こうすることで、フィルターの洗浄が必要になると自動的に逆洗洗浄プロセスが始まります。このプロセスとそれに続くシステムの再起動は自動的に行われるため、システムの休止時間を最小限に抑えることができます。
直面する課題は、この4つのタスクの効果を最大限に引き出すことだけではありません。目的に最も適したタイプのポンプを選ぶことも重要です。こうすることでエネルギー効率の良いシステムが完成し、メンテナンスが減ると同時に、ポンプだけでなく、ポンプを設置しているシステムやアプリケーション内のほかのシステム部品の寿命も伸ばすことができます。
これまでにご紹介した産業用水供給システムの入門知識をふりかえって、それぞれのアプリケーションを切り離して考えるのではなく、システム全体を考慮することが重要だということをもう一度強調したいと思います。
よりインテリジェントなソリューションを選び、そのメリットを活用することで、システム全体の概要を把握できるだけでなく、より効率に優れた、高性能が長期的に持続する産業用水供給システムを手に入れることができます。