蒸気ボイラにおける効率的な液面制御
給水弁を使わずに蒸気ボイラ内の水位を一定に保つ方法を解説します。
蒸気ボイラーでは、水位を一定に保つことが信頼性の高いシステム運用と高品質の蒸気生産に欠かせません。ボイラー内の水の量を制御する方法はいくつもあります。このタスクでは、最も一般的な3つの制御方法の概要と、これに変わる新しいソリューションについて解説します。
まずは一番シンプルな制御方法をご紹介しましょう。レベルスイッチからの入力に基づいて給水ポンプのオンとオフを切り替えることで水位を調整するやり方です。水位が「0」に到達するとポンプは直ちに大量の水をボイラーに送り出します。
このシステム設計は投資額を非常に低く抑えることができますが、いくつか弱点があります。突然大量の冷水がボイラー内に入ってくることで蒸気の品質や圧力が下がり、蒸気生産にばらつきが生じます。また温度が変動することで熱応力が生じ、システムの寿命に悪影響が出てしまいます。起動と停止を何度も繰り返す運転はポンプへの負担にもなります。
このような課題を克服する1つの方法が、ボイラー内にレベルセンサを設置し、その測定値に従って給水弁が水位を調節するシステムです。このシステムでは給水弁が実際の蒸気消費量に基づいてボイラー内に送りこむ水の量を調整します。その結果、水位と蒸気の圧力が常に一定に保たれます。
しかしこの制御方法では給水ポンプが連続運転する必要があります。さらに、シャフトシールの過熱を防止するには、バイパスループが必要です。よって、ポンプはボイラー内の適切な水位を維持するのに必要な以上の水をシステム内で移送することになり、消費電力が増加してしまいます。
また、給水弁そのものにも問題があります。メンテナンス費用が高いだけでなく圧力損失の原因となるため、消費電力がさらに増加してしまうのです。実際に、弁があるシステムは弁がないシステムよりも消費電力が25%増えると言われています。
圧力損失を減らすために給水弁と変速ポンプを組みあわせたのが3番目の制御方法です。変速ポンプは、給水弁の前に取り付けられた圧力センサからの信号に従って運転を調節し、給水弁によって起こる圧力損失を最小限に抑えます。その結果ポンプによる消費電力を削減することができます。しかし、バイパスシステムと給水弁に頼って液面制御を行うという点ではほかの方法と同じです。
グルンドフォスでは、別の制御方法をおすすめしています。変速ポンプを使って水位を直接制御することで、給水弁をなくしてしまうシステムです。給水弁がなくなればバイパスも必要ありません。ポンプは需要に合わせて運転を調整し、スムーズな運用が実現すると同時にシステムがよりシンプルになり、消費電力を大幅にカットすることもできます。
実際に16 barで1時間に20tの蒸気を生産する標準的な負荷プロファイルの蒸気ボイラーシステムで、ボイラー負荷100%時の給水弁での圧力損失が5 barだとすると、年間20,000 kwh以上の省エネを達成することができます。
さらに、弁による圧力損失を補う必要がなくなるため、従来のシステムよりもポンプの段数や電動機のサイズを下げることができます。
総合的に考えると、直接ボイラー給水型への切り替えで削減できる電気代は、高価な新品の給水弁とメンテナンス費用(年に1回)を合わせた金額とほぼ同じになります。
ではおさらいしましょう:
蒸気ボイラーの水位をコントロールする制御方法は主に4つあります。
- オン/オフ制御方法は安価ですが、システムの寿命と蒸気品質が下がってしまいます
- 給水弁を使った制御方法は運転をスムーズにしますが、弁による圧力損失によって消費電力が上昇します
- 給水弁と変速ポンプを使った制御方法は圧力損失を減らすことができる一方、コストの高い給水弁やバイパスに頼っている点ではほかの2つと同じです
- インテリジェントな変速ポンプのみを使って水位をコントロールする制御方法は、弁を使った制御方法のメリットであるスムーズな運転と、オン/オフ制御方法のメリットであるシンプルさと効率をどちらも実現できるうえ、投資額と消費電力を削減することができます